
四国八十八ヶ所歩き遍路の地図と日数|中高年の50日計画と失敗しない準備
こんにちは。瀬戸内の穏やかな海を眺めていると、日々の喧騒が嘘のように心が洗われる気がする、運営者です。
四国八十八ヶ所を、車やバスではなく、自分の足だけで歩いて巡る旅。
そんな壮大でロマンのある計画を思い描いたとき、期待で胸が膨らむ一方で、現実的な不安も同時に湧いてくるのではないでしょうか。
全部歩くと一体どれくらいの日数がかかるのか。地図はどうやって手に入れるのが正解なのか。予算はいくら必要なのか。
特に私のような中高年世代にとっては、50日近い長旅を今の体力で本当に完歩できるのか、途中で失敗してしまわないかという心配は尽きません。
私自身も最初は、果てしなく続く遍路道のイメージに圧倒され、なかなか第一歩を踏み出せずにいました。
しかし、長い旅だからこそ、事前のルート確認やスケジュールの組み立てが、その後の充実感や達成感を大きく左右することになります。
この記事では、これから歩き遍路に挑戦しようとしているあなたに向けて、具体的な距離感や中高年向けの無理のないモデルプラン、そして道中で困らないための準備について、私の経験や学びをもとに徹底的に整理してお話しします。
- 歩き遍路に必要な日数や距離の具体的な目安と計算方法がわかる
- 中高年でも安心な50日モデルプランやスケジュールの立て方がわかる
- 初心者におすすめのモデルコースや信頼できる地図情報がわかる
- 道中で失敗しないための装備準備やマナーの基本がわかる
初めての四国八十八ヶ所歩き遍路と計画

歩き遍路を志す方にとって、まず把握しておきたいのが旅の全体像です。どれくらいの期間を確保すべきで、どのように計画を組み立てればよいのか。ここでは、歩き遍路の基本的な数字や、計画を立てる際のヒントについて、詳しく深掘りしていきます。
四国八十八ヶ所歩き遍路の日数と目安
四国八十八ヶ所をすべて徒歩で巡礼する場合、その総距離はおよそ1,200kmから1,400kmに及ぶと言われています。
この距離の幅は、選ぶルート(海岸線を行くか山道を行くか)や、迷い道、寄り道の有無によって変わってくるためです。
一般的に、通し打ち(一度ですべての札所を巡ること)にかかる日数は、40日から50日程度がひとつの目安とされています。
これは、1日に歩く距離を平均して25kmから30km程度と想定した場合の計算です。
ペース配分による日数の違い
もちろん、これはあくまで標準的な数字に過ぎません。個人の体力や目的によって、必要な日数は大きく変動します。
- 健脚・アスリートペース(30〜35日)
毎日35km以上を歩き、観光はほとんどせずにひたすら札所を目指すスタイル。体力にかなりの自信がある方向けです。 - 標準・平均的ペース(40〜45日)
1日平均25km〜30km。無理なく歩きつつ、時折発生する難所や雨天にも対応できる現実的なプランです。 - ゆったり・観光ペース(50〜60日)
1日20km程度。地元の美味しいものを食べたり、温泉に浸かったり、気に入った場所で連泊したりと、旅の要素を強くしたスタイルです。
日数は天候や体調によっても大きく変動します。特に雨の日は歩行速度が落ちますし、マメができれば休憩も増えます。数字に縛られすぎず、自分の体の声を聞くことが、長く歩き続けるコツです。
予備日は必ず確保しよう
私自身、計画を立てる際は予備日を多めに設けることを強くおすすめします。
例えば、45日で計画するなら、プラス3〜4日の余裕を持たせておくと安心です。
台風で丸一日宿から出られない、足の痛みが強くて半日休養したい、という場面は、長い遍路旅の中で必ずと言っていいほど訪れます。
帰りの日程が決まっている場合でも、カツカツのスケジュールではなく、数日のバッファを持たせておくことで、精神的な余裕が生まれます。
無理のない歩き遍路スケジュールの組み方
スケジュールを組む際にもっとも重要なのは、距離の割り振りではなく、宿泊場所の確保を中心に行程を考えることです。
四国の遍路道は、コンビニや宿が充実している市街地を通ることもあれば、次の集落まで数時間かかるような山道を行くこともあります。
特に、高知県の室戸岬へ向かう道や、足摺岬周辺などの長い海岸線ルート、そして山間部では、宿が極端に少ないエリアが存在します。
そのため、ただ今日は30km歩こうと決めるのではなく、30km先に泊まれる宿があるかを確認してから、1日のゴールを設定する必要があります。
1日のタイムスケジュール例
歩き遍路の朝は早いです。季節にもよりますが、多くの遍路宿では朝食が6時頃から始まり、7時には出発するのが一般的です。
ある日のモデルスケジュール(秋頃)
- 06:00 起床・朝食・身支度
- 07:00 宿を出発(ウォーミングアップをして歩き出す)
- 10:00 休憩(10km地点)。靴を脱いで足を休める
- 12:00 昼食(道の駅や食堂、なければ持参したおにぎり)
- 15:00 ラストスパート(宿まであと少し)
- 16:00〜17:00 宿に到着・チェックイン
- 18:00 夕食・洗濯・翌日の計画確認
- 21:00 就寝(早寝早起きが鉄則です)
夕方17時を過ぎると、山道などは急速に暗くなり危険です。
どんなに遅くとも17時には宿に到着できるよう、逆算して出発時間を決めるのが安全に歩くコツです。
宿の種類と選び方
遍路道には様々なタイプの宿泊施設があります。
- 遍路宿・民宿
家庭的な雰囲気で、夕食時に他の遍路さんと情報交換ができるのが魅力です。1泊2食付きで7,000円〜9,000円程度が相場です。 - ビジネスホテル
市街地に多く、プライバシーが保たれます。洗濯機や乾燥機が充実していることが多いです。 - 宿坊(しゅくぼう)
お寺にある宿泊施設です。朝のお勤めに参加できる場所もあり、貴重な体験になります。 - 善根宿(ぜんこんやど)・通夜堂
地域の方や住職の善意で提供される無料または低額の宿泊所です。利用には感謝とマナーが必須です。
人気のある宿や、そのエリアに一軒しかない宿は、遍路シーズン(春・秋)にはすぐに満室になります。
できれば前日の昼まで、遅くとも当日の午前中には予約の電話を入れるようにしましょう。
地図の入手方法と歩き遍路のルート

見知らぬ土地を歩く遍路旅において、頼りになる地図は命綱とも言える存在です。
最近ではスマートフォンの地図アプリも非常に便利ですが、山奥では電波が届かない場所があったり、長時間の使用でバッテリーが切れたりするリスクも否定できません。
また、一般的な地図アプリでは歩き遍路専用の細い山道が表示されないことも多々あります。
そのため、アナログな紙の地図を必ず携帯することを強くおすすめします。
歩き遍路のバイブル的な地図
歩き遍路専用の地図として、巡礼者の間で圧倒的な信頼を得ているのが、へんろみち保存協力会が発行している地図書籍です。
通称黄色い地図とも呼ばれ、以下のような詳細情報が網羅されています。
- トイレや休憩所、水飲み場の正確な位置
- 遍路道の細かい分岐点や目印
- 次の札所までの距離と高低差(断面図)
- コンビニ、自動販売機、郵便局の場所
- 宿泊施設の電話番号と位置
この地図一冊があるだけで、安心感がまったく違います。ネット通販や、1番札所霊山寺の売店などで購入可能です。
公式マップの活用とアプリの併用
また、各県の観光協会や霊場会などが提供しているPDFマップも役立ちます。
これらは公式サイトから無料でダウンロードできるものが多く、全体的なルートの概要を掴んだり、タブレットで閲覧したりするのに便利です。
(出典:一般社団法人 四国八十八ヶ所霊場会『各霊場の紹介』)
実践的な使い方としては、基本は紙の地図でルートと現在地を確認し、宿の正確な場所を探したり、現在地の周辺店舗を探したりする際にスマホアプリを併用するのがベストです。
古い地図データや数年前のブログ情報には、現在通行止めになっている道や、すでに廃業してしまった宿が掲載されていることもあります。現地での看板や聞き込み、そして最新情報をネットで確認する慎重さも忘れないようにしましょう。
ルート選びの基本:順打ち
ルート選びに関しては、もっとも一般的なのが、1番札所から番号順に回る順打ちです。
遍路道の案内標識(赤い矢印シールや石柱)も、基本的には順打ちを想定して設置されているため、初めての方でも道に迷いにくいという大きなメリットがあります。
地図を読み、現地のマークを探しながら一歩ずつ進む。
その作業自体が、便利な日常から離れ、自分自身と向き合う遍路旅の醍醐味のひとつかもしれません。
初心者におすすめの歩き遍路モデルコース
いきなり40日以上の通し打ちをするのは、仕事や家庭の事情で難しいという方も多いでしょう。
そんなときは、週末や連休を利用して少しずつ回る区切り打ちや、1日だけ体験するモデルコースから始めてみるのがおすすめです。
全て歩き通さなければ意味がないということはありません。
部分的に歩くだけでも、遍路道の空気感や地元の方との触れ合いは十分に感じられます。
まずはここから!定番の入門コース詳細
| コース名 | エリア | 所要時間 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 発心の道コース | 徳島県(1番〜6番) | 約1日 | 平坦で歩きやすく、札所間の距離も短いため、初めてのお試しに最適です。 |
| 屋島古道コース | 香川県(84番周辺) | 半日〜1日 | 歴史ある山道を歩き、山頂からの瀬戸内海の眺望も楽しめる人気のルートです。 |
| 温泉と名刹コース | 愛媛県(51番周辺) | 約1日 | 国宝・石手寺などを巡り、最後は道後温泉で疲れを癒やすことができる観光も兼ねたプランです。 |
徳島1番〜6番コースの魅力
特に徳島県の1番霊山寺から始まるコースは、一番さんとして親しまれ、お遍路用品を揃える売店も充実しています。
ここから6番安楽寺までの約16kmは、田園風景の中を歩く平坦な道が続き、初心者でも無理なく歩ける距離です。
途中の札所も見どころが多く、極楽寺の長寿杉や、金泉寺の黄金の井戸など、伝説に触れることもできます。
また、このエリアは遍路宿やうどん店なども点在しており、初めてのお接待を受ける機会もあるかもしれません。
香川県の「上がり3カ寺」コース
もう一つの人気コースは、結願(けちがん)の地である香川県の86番志度寺から88番大窪寺を目指すルートです。
最後の大窪寺へ向かう道は、女体山(にょたいさん)という山越えがあり、最後の最後に遍路らしい厳しさと、それを乗り越えた時の絶景が待っています。
ゴールである大窪寺で金剛杖を納めたときの達成感は、たとえ区切り打ちであっても格別なものです。
自分の体力や日程に合わせて、無理のない範囲で小さなゴールを設定し、達成感を積み重ねていく。
そうすることで、お遍路がより身近で、楽しいライフワークのように感じられるはずです。
中高年のための歩き遍路50日モデルプラン

定年退職などを機に、夫婦や一人で歩き遍路に挑戦したいと考える中高年の方も増えています。
体力に自信がない、あるいは膝や腰への負担が気になるという場合は、標準的な40日プランではなく、50日から60日程度のゆとりあるプランを立てることをおすすめします。
なぜゆとりが必要なのか
若いうちは気合と体力でカバーできることもありますが、中高年の歩き遍路で最も怖いのは、疲労の蓄積による怪我や持病の悪化です。
1日の歩行距離を20km以下、時には15km程度に抑えることで、体への負担を軽減しやすくなります。
また、焼山寺道や鶴林寺・太龍寺といった難所と呼ばれる山越えの手前では、無理に進まず、麓の宿で連泊して英気を養う勇気も必要です。
なお、持病がある場合や、膝や腰に強い不安を感じる場合は、自己判断せず、出発前や道中に医師などの専門家に相談することをおすすめします。
ハイブリッドな遍路スタイルの提案
すべてを意地でも歩くことにこだわらず、バスや電車、タクシーなどの公共交通機関をうまく組み合わせるのも賢い方法です。
例えば、交通量が多く歩道が狭い危険な国道区間(トラックが多く通るトンネルなど)はバスでワープし、静かな旧道や山道だけを選んで歩く。
こうした公共交通機関を組み合わせたスタイルは、ここでは便宜的にハイブリッド遍路と呼び、安全かつ快適に楽しむ歩き方の一例として紹介できます。
ゆとり旅を楽しむためのヒント
- 歩きに固執せず、体調や天候に合わせて柔軟に交通機関を利用する
- 観光スポットや温泉、地元のグルメを楽しむ完全休養日を設けてリフレッシュする
- 荷物を次の宿へ送る配送サービスやタクシーの運搬を活用し、当日は身軽な状態で歩く
費用の目安について
日数が延びれば、当然ながら滞在費もかさみます。
歩き遍路(通し打ち)の費用の目安は、宿泊費、食費、納経代、交通費などを含めて1日あたり10,000円〜12,000円程度と言われています。
50日の旅であれば、総額で50万円〜60万円程度の予算を見ておくと安心です。
もちろん、野宿や善根宿を利用して費用を抑える方法もありますが、中高年の方にはしっかりとした寝具と食事で体を休めることを優先していただきたいと思います。
お遍路は修行の側面もありますが、自分を痛めつけることが目的ではありません。
心穏やかに、景色や出会いを楽しみながら過ごす時間こそが何よりの宝物です。
無理をして体を壊してしまっては元も子もありませんから、自分のペースを守ることを最優先に考えてみてください。
初心者が抱きがちな不安や、準備の心構えについては、以下の記事も参考にしてみてください。
四国八十八ヶ所の歩き遍路を楽しむコツ

計画ができたら、次は実際に歩く際の具体的な準備や心構えについてです。先達たちの体験談を参考にしたり、現地でのマナーを知っておくことで、旅はより深く、味わい深いものになります。
参考になる歩き遍路体験記の読み方
インターネット上には、実際に歩き遍路を達成した方々のブログや体験記がたくさん公開されています。
これらは情報の宝庫ですが、読む際には少しコツが必要です。
自分と近い属性の記録を探す
まず、執筆者の年齢や性別、普段の運動習慣が自分に近いかどうかを確認しましょう。
普段からマラソンや登山をしている健脚な若者の、余裕でした、1日40km歩けました、という感想を鵜呑みにしてしまうと、実際の道中でこんなはずじゃなかった、と苦労することになるかもしれません。
逆に、自分と同じような体力や悩み(膝痛や腰痛など)を持つ方の体験記は、足のケア方法やサポーターの選び方、モチベーションの保ち方など、共感できるヒントがたくさん詰まっています。
季節による条件の違い
また、記事が書かれた時期や季節も重要なチェックポイントです。
真夏の炎天下のアスファルトと、真冬の凍てつく山道では、必要な装備も水の消費量も、体力の消耗度もまったく異なります。
- 春(3月〜5月):気候が良く桜も楽しめるベストシーズンですが、宿が混み合います。
- 夏(6月〜8月):猛暑と湿気との戦いです。熱中症対策が必須で、休憩回数も増えます。
- 秋(9月〜11月):台風シーズンですが、晴れれば快適に歩けます。紅葉も美しい時期です。
- 冬(12月〜2月):山間部では積雪や凍結があり、装備が増えます。日照時間が短いため歩行時間も限られます。
自分が歩く予定の季節に近い体験談を探すことで、よりリアルなシミュレーションが可能になります。
時には、宿の対応が悪かった、野犬に出会った、といったネガティブなトラブル情報に出会うこともあるかもしれませんが、そういうこともあるんだな、と、ひとつの事例として受け止める冷静さも大切です。
失敗しないための歩き遍路の事前準備

歩き遍路での失敗談としてもっとも多く聞かれるのが、靴選びと荷物の重さに関するものです。
準備不足で足を痛めてリタイヤしてしまうのは、本当にもったいないことです。ここでは、特に重要な装備について深掘りします。
靴選びは命綱
靴は、歩き遍路のパートナーです。デザインよりも機能を最優先してください。
一般的には、以下のような靴が選ばれています。
- ウォーキングシューズ:舗装路(アスファルト)が多い遍路道に向いています。クッション性が高く、足への衝撃を和らげます。
- 軽登山靴(トレッキングシューズ):山道や未舗装路が多い区間(焼山寺など)で力を発揮します。足首を保護してくれるミッドカットが人気です。
重要なのは、新品の靴をいきなり履いていかないことです。
出発の数ヶ月前から履き慣らし、自分の足の形に馴染ませておくことが、マメや靴擦れを防ぐ基本中の基本です。
また、靴下も重要です。厚手のトレッキング用靴下や、五本指ソックスを重ね履きして、皮膚の摩擦を減らす工夫をする方も多くいます。
荷物の軽量化は最大の防御
荷物の重さは疲労に直結します。1kgの違いが、後半の疲労感に天と地ほどの差を生みます。
あれもこれも必要かも、と心配性になって詰め込みすぎると、肩や腰への負担が増し、歩くこと自体が苦痛になってしまいます。
一般的な目安として、ザックの総重量は体重の10分の1程度、あるいはどんなに重くても7〜8kg程度までに抑える人が多いとされています。
荷物を減らすコツ
現地で調達できる日用品(洗剤、シャンプー、歯磨き粉、タオルなど)は、必要最低限だけ持ち、なくなったらドラッグストアやコンビニで買い足すスタイルにしましょう。
雨具への投資は惜しまない
四国の天気は変わりやすく、雨の中を長時間歩くこともあります。
100円ショップのレインコートではなく、登山用のしっかりとしたレインウェア(上下セパレートタイプ)を用意することをおすすめします。
体が濡れて冷えると急速に体力を奪われますし、蒸れて汗をかくと不快感で集中力が削がれます。
快適に歩くための投資と考えて、透湿防水素材などの高機能なものを選ぶと良いでしょう。ザックカバーも必須です。
具体的な持ち物リストについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
歩き遍路ルートの注意点とマナー
遍路道は、観光地である以前に、地元の方々の生活の場でもあります。
お遍路さんが気持ちよく歩けるのは、地域の方々の理解と協力があってこそです。
挨拶はコミュニケーションの基本
すれ違う際には、こんにちは、と笑顔で挨拶を交わすのがお遍路の基本マナーであり、コミュニケーションの第一歩です。
また、他のお遍路さんとすれ違う際には、挨拶ではなく、合掌して会釈をしたり、ようお参りです、と声を掛け合ったりすることもあります。
地元の方からの、お気をつけて、頑張って、という温かい声かけが、どれほど歩く力になるか分かりません。
交通ルールと安全対策
お遍路だからといって、特別な交通ルールが適用されるわけではありません。
歩道のない狭いトンネルや、交通量の多い国道を歩く場面も多々あります。
ドライバーから見えやすいように、反射材を身につける、白衣などの明るい色の服を着るなど、自分の身を守る工夫をしましょう。
原則として右側通行ですが、カーブの状況などによっては、安全な側を判断して歩く柔軟性も必要です。
施設利用の配慮
トイレや休憩所の利用についても感謝の気持ちを忘れずに。
遍路道にある善根宿(ぜんこんやど)や休憩所は、行政ではなく、地元の方の個人の善意で維持管理されていることがほとんどです。
来た時よりも美しくの精神で、ゴミは必ず持ち帰る、汚したら掃除をするなど、次に来る人のことまで考えた行動が大切です。
自分の家の前で大声で騒がれたり、ゴミを捨てられたりしたら嫌なように、地域の方への配慮を常に忘れないようにしましょう。
さらに詳しいマナーや、やってはいけない行動については、以下の記事もあわせてご覧ください。
お遍路初心者必見!四国八十八ヶ所巡りでやってはいけない行動と守るべきマナー
お遍路でやってはいけないことと心構え
お遍路において、もっとも避けるべきなのは感謝の心を忘れることかもしれません。
四国には、古くからお遍路さんを大切にする文化が根付いています。
お接待の受け方
道中、地元の方から飲み物やお菓子、時には果物などをいただくお接待を受けることがあります。
これは、お遍路さんを弘法大師様と同じように敬い、お接待をすることで自分も功徳を積むという相互扶助の精神に基づいています。
このとき、たとえ荷物になるからと不要に思っても、無下に断るのは失礼にあたるとされています。
ありがとうございます、と笑顔で受け取り、自分の納札(おさめふだ)をお渡しするのが礼儀です。
ただし、最近では感染症対策などの観点から、接触を控える動きもあります。状況に応じて、会釈だけで深く感謝を伝えるなど、相手の意図を汲んだ柔軟な対応も必要です。
納札(おさめふだ)の色と意味
お接待のお返しや、お寺への参拝で納める納札には、巡拝回数によって色が異なるというルールがあります。
- 白:1回〜4回
- 緑:5回〜7回
- 赤:8回〜24回
- 銀:25回〜49回
- 金:50回〜99回
- 錦:100回以上
初心者は白の札を使います。見栄を張って色を変える必要はありません。
白い札であっても、心を込めて納めれば、それは尊い証となります。
橋の上での作法
また、橋の上では杖をついてはいけないという習わしがあります。
これは、橋の下で弘法大師様が休まれているかもしれない、あるいは弘法大師様が橋を作ってくださったことへの感謝を表す、という言い伝えによるものです。
お大師様を起こさないように、という配慮から生まれたこの作法は、現在でも多くのお遍路さんが守っています。
こうした作法や言い伝えには、先人たちの思いや優しさが込められています。
形だけを気にして緊張する必要はありませんが、その背景にある敬う心を大切にすることで、お遍路の旅がより味わい深いものになるはずです。
初心者への四国八十八ヶ所歩き遍路まとめ
四国八十八ヶ所の歩き遍路は、単なるスタンプラリーやハイキングとは少し違う、人生の縮図のような特別な体験です。
約1,200kmという距離や、40日以上という日数は、確かに長く険しい道のりかもしれません。
しかし、一歩一歩進んでいけば、必ず景色は変わり、前へと進んでいきます。
歩けるだろうか、と不安になる必要はありません。
最初は地図を手に取り、週末だけの区切り打ちからでも、あるいは自宅近くの道をザックを背負って歩く練習からでも始めてみてはいかがでしょうか。
完璧な計画でなくても大丈夫です。
道に迷い、足が痛み、それでも歩き続けた先に見える美しい景色や、人の温かさ。
それが、あなただけの「幸せのかたち」を見つける大切なヒントになるかもしれません。
準備を整え、無理のないペースで、あなたらしい素晴らしいお遍路の旅を楽しんでください。













