
四国の大地を歩き、自分自身を見つめ直すお遍路の旅。いざ行こうと思い立ったとき、最初にぶつかる壁が何を用意すればいいのかという問題ではないでしょうか。
長い歴史を持つ巡礼だからこそ、独自の道具や作法があり、初めての方なら戸惑うのも無理はありません。私も最初は、何が必須で何が代用可能なのか、情報を整理するだけで一苦労でした。準備を進めるうちに、ふと鏡に映った自分の顔が少しだけ晴れやかになっていることに気づき、胸の奥がじんわりと熱くなったのを覚えています。
この記事では、四国八十八ヶ所霊場会が推奨する基本的な持ち物から、2024年に改定された最新の納経ルール、さらには女性や初心者が現地で困らないための工夫まで、お遍路の準備を整えるためのガイドをまとめました。
読み終える頃には、不安がワクワクへと変わり、すぐにでも出発の準備を始めたくなっているはずです。
- 霊場会が定める必需品4点と巡礼者として最低限守るべき装いがわかる
- 正装と略装の具体的な線引きや、それぞれのメリット・デメリットがわかる
- 一番札所の霊山寺門前での調達方法や、準備にかかる費用の目安がわかる
- 納経所の受付時間や料金改定など、現地で慌てないための最新ルールがわかる
お遍路の準備で揃えたい道具と初心者の心得

お遍路の旅を始めるにあたり、まずは巡礼者としての形を整えることが、自分自身の心構えを一段引き上げてくれます。
ここでは、霊場会が明示する必須アイテムから、服装の選び方、および現地での調達方法まで、お遍路の準備における基礎知識を深掘りしていきましょう。
霊場会が明示する必需品とお遍路で準備するもの

お遍路には多くの道具が存在しますが、四国八十八ヶ所霊場会が必ず持つべきものとして公式に挙げているのは、輪袈裟、金剛杖、念珠、納経帳の4点です。これらは単なる観光グッズではなく、修行者としてのアイデンティティを支える大切な仏具として扱われます。
金剛杖とお大師さまへの敬意
金剛杖はお大師さまの象徴として丁寧に扱うと案内されています。札所では杖置き場を利用し、橋の上ではお大師さまが休んでいるかもしれないという言い伝えから、杖をつかない慣習があるとも紹介されています。宿泊時は宿の案内に従い、周囲の迷惑にならない倒れない場所に置いて休ませるようにしましょう。
念珠と輪袈裟の役割
念珠(数珠)は参拝時の合掌に欠かせないもので、宗派を問わず自分の使い慣れたもので構いません。また、輪袈裟は略装でも巡礼者としての形を整えやすい装具です。洋服の場合でも、白衣や輪袈裟を身につけることで気持ちが整い、参拝がしやすくなります。
巡礼の装いを整えることで期待される心境の変化
白衣に袖を通し、菅笠を被る。こうした装いを整えることは、想像以上に自分の内面に変化をもたらします。白い装束は、かつての巡礼者が死を覚悟して旅に出た名残と言われていますが、現代においては日常からの解放や純粋な自分へのリセットを象徴する役割を果たしています。
私の場合、白装束で歩き始めると気持ちが引き締まり、一歩一歩が特別に感じられました。あるいは、装いを整えることで気持ちが変わると感じる人もいます。また、周囲から見てお遍路さんだと一目でわかるため、地元の方から温かい声をかけられたり、道に迷った際に助けてもらえたりする機会も増えます。こうした交流は、お遍路の醍醐味であるお接待の文化に触れるきっかけにもなり、旅の満足度を大きく高めてくれるでしょう。
必要な道具を一式揃えるための予算と費用の目安
お遍路の道具をゼロから揃える場合、予算は2万円から3万円前後が一般的な目安とされています。素材や専門店によって価格は前後しますが、巡礼用品店での標準的なセット価格を参考にすると、以下のような内訳になります。最新の価格情報は販売店の公式サイト等を確認することをおすすめします(参考:門前一番街「販売について」)。
| アイテム | 概算費用の目安 | 補足事項 |
|---|---|---|
| 白衣(袖あり/袖なし) | 2,500円〜4,500円 | 着る用と納経用を分けるのが一般的です |
| 輪袈裟 | 1,500円〜3,500円 | 色や柄で価格が変わります |
| 金剛杖 | 1,200円〜2,500円 | カバーや鈴がセットのものもあります |
| 納経帳 | 2,500円〜5,000円 | サイズや表紙のデザインで幅があります |
| 菅笠 | 2,500円〜4,000円 | 日除け・雨除けとして非常に優秀 |
| 山谷袋(さんやぶくろ) | 2,000円〜4,000円 | 防水加工されているものが便利 |
これに加えて、参拝時の消耗品(線香・ろうそく・納札)が数千円程度必要になります。最初から高価なものを揃える必要はありませんが、長く使う納経帳などは、自分が気に入ったデザインのものを選ぶと愛着がわき、道中の励みになります。
納経帳や御朱印用白衣の用途と正しい選び方
お遍路における御朱印(納経)は、スタンプラリーではなく、各札所で読経や写経を納めた証としていただくものです。この証をいただく対象として、納経帳と納経用白衣の2種類があります。
納経帳の選び方のポイント
納経帳には、最初からお寺の名前や御詠歌が印刷されているものが多く、初心者には使いやすくなっています。サイズは持ち運び重視の小型から、墨書きの迫力が楽しめる大型まで様々ですが、雨の日も持ち歩くことを考え、ビニールカバー付きのものを選ぶのがコツです。
納経用白衣(判衣)の考え方
白衣に御朱印をいただく場合、汚れや傷みを避けるために道中衣(着用)と判衣(朱印用)を分けて2着用意する方も多いです。御詠歌入りの白衣は主に朱印用に用いますが、着用して巡礼しても問題ありません(出典:四国八十八ヶ所霊場会「遍路用品」)。ただし、墨や朱印をきれいに保ちたい場合は、納経専用として大切に扱うのが無難です。
略装は可能か?輪袈裟だけで参拝する際の注意点
伝統的な白装束で巡るのが理想ですが、現代のお遍路では略装も広く受け入れられています。例えば、動きやすいスポーツウェアや登山服の上から、輪袈裟をかけ、金剛杖を持つだけでも、立派なお遍路さんの姿となります。すべてを揃えるのが負担に感じる場合は、まずこのスタイルから始めるのも一つの手です。
ただし、略装であってもお寺という聖域に入るための礼儀は欠かせません。派手すぎる服装や、サンダル、ハーフパンツといった露出の多い格好は避けるのが望ましいでしょう。また、霊場会は袈裟は必ず着用することを推奨しています。輪袈裟一つあるだけで、自分自身の気持ちが引き締まるだけでなく、お寺の方々や他の参拝者からも敬意を持って迎えられることにつながります。
女性が歩きやすいお遍路の服装と身だしなみ
女性がお遍路の準備をする際、特に重視したいのが紫外線対策と足元の安定感です。四国の道は、アスファルトの照り返しが強い街中から、急勾配の山道まで多岐にわたります。日焼けを防ぐためには、菅笠が非常に合理的ですが、使い慣れない場合は広つばの帽子でも代用可能です。白衣は袖があるタイプを選ぶと、腕の日焼け防止にも役立ちます。
また、足元は履き慣れたウォーキングシューズやトレッキングシューズが一番です。階段や段差が多いお寺も多いため、ヒールのある靴は控えましょう。身だしなみについては、あまり華美なメイクや香水は避け、周囲の自然や静寂に溶け込むような、清潔感のあるスタイルを心がけると、心穏やかに巡拝を楽しむことができます。
最初の出発地点で巡礼用品を揃えるメリット

事前のネット通販も便利ですが、もし可能なら第1番札所である霊山寺の門前にある売店で揃えることを強くおすすめします。ここにはお遍路用品の専門店が集まっており、数多くの実物を手に取って比較することができます。
最大のメリットは、知識豊富な店員さんに相談しながら選べる点です。白衣のサイズ合わせはもちろん、杖の適切な長さ、納経帳の扱い方、さらにはローソクの立て方といった基本的な作法まで、その場でレクチャーを受けることができます。何も知らない状態でスタートする初心者にとって、これほど心強いサポートはありません。徳島県の公式ホームページでも、門前で直接説明を受けながら購入することが紹介されています(出典:徳島県公式ホームページ「四国88カ所巡りの道具一式を揃えたいが、どこに行けば買えますか。」)。
効率的に進めるためのお遍路の準備と段取り

道具が揃ったら、次は具体的な旅の計画を立てる段階です。四国は広く、移動手段や天候によって必要な準備も変わってきます。
ここでは、初心者が陥りがちな失敗を避け、より快適にお遍路を続けるための具体的なノウハウを解説していきます。
無理なく歩き切るためのスケジュールの組み方
お遍路を一度の旅ですべて巡る通し打ちは、歩きなら約40日から50日、車でも10日から2週間ほどかかります。体力や休みに自信がない場合は、数回に分けて巡る区切り打ちから始めるのが賢明です。無理なスケジュールは怪我や挫折の原因になるため、最初の数日は予定を詰め込みすぎないのがコツです。
納経所の受付時間は、霊場会の変更により現在は原則8:00〜17:00です(出典:四国八十八ヶ所霊場会「お遍路の心得」)。寺院や時期により前後する場合があるため、当日は余裕を持った事前確認が安心です。また、宿の予約も重要です。特に札所の近くや人気の宿は早めに埋まってしまうため、遅くとも前日までには手配を済ませる習慣をつけましょう。自分に合ったペースを見つけることが、完拝への一番の近道です。
忘れ物防止に役立つお遍路の持ち物リスト

大きな道具以外に、現地でこれがあって助かった!と実感するアイテムをリストアップしました。特に小銭は、驚くほど頻繁に使用します。
| ジャンル | 必須・便利な持ち物 | 活用のポイント |
|---|---|---|
| 貴重品 | 小銭入れ(がま口など) | 10円、50円、100円玉を常に数十枚用意 |
| 参拝用品 | ライター・マッチ | 風に強いターボライターが屋外では便利 |
| ケア用品 | ウェットティッシュ | 線香の灰で汚れた手を拭くのに重宝 |
| デジタル | モバイルバッテリー | 地図アプリを使うと電池消耗が激しいです |
| 雨対策 | ザックカバー・ポンチョ | 山の天気は変わりやすいので常に携行 |
お賽銭用に10円玉や5円玉を大量に準備するのは大変ですが、銀行であらかじめ両替しておくか、道中の自動販売機などを活用してこまめに作っておくのがお遍路さんの知恵です。キャッシュレス決済が普及した現代でも、お遍路の現場はまだまだ現金(特に小銭)が主役であることを覚えておきましょう。
線香や納札など参拝時に欠かせない消耗品
参拝のたびに使用する消耗品は、切らさないように予備を持っておくのが鉄則です。特に納札(おさめふだ)は、本堂と大師堂の2箇所に納めるため、1つのお寺で最低2枚使用します。88ヶ所すべてを巡るなら、最低でも88寺×2枚=176枚が必要です。迷ったとき用やお接待のお礼分も考え、200枚前後あると安心です(参考:四国八十八ヶ所霊場会「遍路用品」)。
線香やろうそくは、本堂では線香3本・ろうそく1本と案内されることが一般的で、大師堂でも同様に行うため、結果として1寺あたり線香6本・ろうそく2本を消費する場合が多いです。作法の詳細は、公的な観光案内も参考にしながら札所の指示に従ってください(出典:香川県観光協会公式サイト うどん県旅ネット「お遍路の参拝作法」)。
道中をより快適にするお遍路の便利グッズ
長旅をサポートしてくれる便利グッズをご紹介します。まずおすすめしたいのが、山谷袋(さんやぶくろ)の整理術です。納経帳、納札、線香ケースなど、頻繁に出し入れするものを1つの袋にまとめ、常に体の前側に下げておくことで、リュックをいちいち下ろすストレスから解放されます。
また、足のトラブルを防ぐために、五本指ソックスを愛用するお遍路さんも多いです。指同士の摩擦が減り、マメができにくくなります。さらに、夏場であれば水に濡らして首に巻くクールタオル、冬場であれば薄手のダウンベストなど、温度調節が容易なアイテムを1つ加えるだけで、過酷な道中がぐっと快適になります。こうした小さな工夫の積み重ねが、最後まで元気に歩き抜くための秘訣です。
料金改定や参拝時間の変更に関する事前確認

お遍路の準備で最も見落としがちなのが、最新の制度変更です。四国八十八ヶ所霊場会は、2024年4月1日より納経料の改定を実施しました。現在、納経帳への押印は500円となっています。掛け軸は700円、白衣は300円へとそれぞれ変更されています(出典:四国八十八ヶ所霊場会「各種料金改定・変更のお知らせ」)。
また、一部の寺院では参拝者の安全確保や管理の都合上、納経所の受付時間を短縮したり、昼休憩を設けたりしているケースもあります。現地に到着してから、受付時間が終了していたという事態を避けるためにも、事前に霊場会の公式サイトや、お遍路専用のアプリなどで最新の稼働情報をチェックしておく習慣をつけましょう。こうした情報の確認も、立派なお遍路の準備の一部です。
初心者もお遍路の準備を楽しみながら整えるコツ
いよいよ準備も大詰めですが、最後に大切にしてほしいのは、準備そのものを楽しみながら進めることです。道具を一つひとつ手に取り、これから始まる冒険に思いを馳せる時間は、何物にも代えがたい豊かなひとときです。すべての作法を完璧にこなそうと気負う必要はありません。
わからないことがあれば、お寺の方や先達と呼ばれる経験者に、笑顔で「教えてください」と聞いてみましょう。お遍路の世界は、そうした助け合いの精神で成り立っています。この記事で整理したお 遍路 準備を参考に、まずは一歩を踏み出してみてください。あなたが四国の大地で出会う景色や人々、および自分自身の心の変化が、かけがえのない宝物になることを確信しています。それでは、お気をつけて。同行二人、お大師さまと共に良い旅を!
もし、歩行中の体調管理や持病に関して不安がある場合は、無理な自己判断をせず、事前にお医者さまに相談して、余裕を持った計画を立てるようにしてくださいね。













