お遍路は気持ち悪い？不安の正体と安心して巡るための心構え

幸せのかたちの運営者です。

四国遍路について調べているとき、ふと、お遍路は気持ち悪い、お遍路は怖い、といったネガティブな言葉を目にして、ドキッとしたことはないでしょうか。これから心を込めて巡ろうとしている神聖な旅なのに、そんな評判や不気味な噂を聞くと、どうしても足がすくんでしまいますよね。

私自身、親の供養のために初めて巡礼を志したときは、白装束という非日常的な姿への抵抗感や、見知らぬ土地を一人で歩くことへの緊張から、漠然とした怖さを感じていました。本当に大丈夫だろうか、変な目で見られないだろうかと、出発前夜まで悩んでいたことを覚えています。しかし、実際に四国の地を踏みしめ、弘法大師空海の教えや地元の方々の温かい優しさに触れる中で、その不安はここに来てよかったという深い安堵感へと変わっていきました。

この記事では、なぜそのようなネガティブな噂が囁かれるのか、その背景にある誤解や事実を丁寧に整理します。そして、初心者の方が安心して一歩を踏み出すための具体的なヒントを、私の経験を交えてお届けします。決して怖い場所ではありません。あなたの心を軽くし、前向きに旅立つための準備を、一緒に始めていきましょう。

お遍路が気持ち悪いと言われる背景

神聖な修行の旅であるはずのお遍路に対して、なぜ気持ち悪いや怖いといったネガティブなイメージを持つ人がいるのでしょうか。その背景には、歴史的な文脈、現代のマナー問題、そしてネット特有の情報の広がり方など、いくつかの要因が複雑に絡み合っています。まずは、その不安の正体を客観的に解きほぐしていきましょう。

一部のマナーが悪いという批判

お遍路さんが敬遠されてしまう原因の一つに、残念ながら一部の巡礼者によるマナー違反があります。これは全体から見ればごく少数の事例ですが、そのインパクトが強いため、SNSや掲示板などで語られやすい傾向にあります。

本来、お遍路は十善戒（むやみに生き物を殺さない、嘘をつかないなど）を守り、慎み深くあるべき修行の旅です。しかし、中にはお接待（地元の方からの無償の施し）を当然の権利のように要求したり、自分は修行をしているのだから偉いと勘違いして横柄な態度を取ったりするケースが稀に報告されています。また、善根宿（無料の簡易宿泊所）や休憩所のトイレを汚したまま立ち去るといった行為も、地元の方々を失望させる原因となっています。

近年では外国人観光客も増えており、文化的な違いから意図せず私有地に入り込んでしまうなどのトラブルもありますが、こうした一部の行動が、お遍路全体のイメージを損なってしまっている側面は否定できません。

私たちが気をつけるべき愛されるお遍路さんの振る舞い

私たちがお遍路に出る際は、自分がお四国さんの代表として見られているという意識を持つことが大切です。特別なことをする必要はありません。以下の3つを心がけるだけで十分です。

• 笑顔の挨拶：すれ違う人には、地元の方でもお遍路さんでも、明るく挨拶をしましょう。
• 来た時よりも美しく：休憩所やトイレを使わせてもらったら、必ずゴミを持ち帰り、汚れていたらさっと掃除をするくらいの気持ちで。
• 感謝の言葉と納札：お接待を受けたら、「ありがとうございます」と丁寧に感謝を伝え、自分の名刺代わりである納札（おさめふだ）を手渡します。

ネットで囁かれるやばい寺の噂

インターネット上では、特定の札所についてやばい寺や行ってはいけない場所といった、不安を煽るような情報を見かけることがあります。こうした噂の中には、かつての廃寺跡や、木々が鬱蒼として少し暗い雰囲気の場所が、面白おかしく心霊スポットとして取り上げられたケースも含まれています。

実際の八十八ヶ所の札所は、多くの人々が祈りを捧げる清浄な場所であり、朝のお勤めから夕方の閉門まで、僧侶や参拝者によって守られた凛とした空気が流れています。ネット上の噂は、閲覧数を稼ぐために誇張された表現であることも少なくありません。やばいという言葉の響きに、過度に怯える必要はないでしょう。

怖いと感じるのは厳かさの裏返しかも？

ただし、お寺によっては観光地化されておらず、修行のための道場として厳格な雰囲気を保っている場所もあります。古い仏像の眼差しや、苔むした境内の静寂を怖いと感じる人もいるかもしれません。しかし、それは恐怖というよりも、背筋が伸びるような神聖さ（畏敬の念）と捉えるのが自然です。

観光気分で大騒ぎしたり、立ち入り禁止区域に入ったりせず、静かに手を合わせて祈れば、何も恐れることはありません。むしろ、その静けさが心の雑音を取り払ってくれるはずです。

巡礼にまつわる怖い話と伝承

四国には、古くから多くの不思議な伝承が残されています。罪人が許しを請う話や、悲しい因縁の物語、あるいは衛門三郎のように弘法大師を追い求めて旅立った話など、現代の感覚では少し怖いと感じるものもあるでしょう。

また、小説や映画などの創作物で、四国を死国（死者の国）に見立て、死者を蘇らせる儀式としての巡礼が描かれたことも、怖いイメージを広める一因となりました。しかし、これらはあくまで物語や、人としてのあり方を説く戒めとしての伝承です。

怖い話に込められた本当の意味

現実のお遍路は、自分自身の心と向き合う穏やかな旅であり、創作の世界とは一線を画しています。古くからの言い伝えや七不思議と呼ばれるような話の多くは、単なるホラーではありません。

• 悪いことをしてはいけない
• 親孝行をしなさい
• 約束は守りなさい

といった、人間としての教訓を含んでいることが多く、深く知れば知るほど、人間の業（ごう）や救いについて考えさせられる深いテーマであることに気づきます。怖い話も、自分を律するためのメッセージとして受け止めれば、味わい深い旅のスパイスになります。

旅先でのトラブルを避けるには

人間関係のトラブルを心配する方もいるでしょう。同じ道を歩くお遍路さん同士は、同じ目的を持つ仲間として強い連帯感が生まれる一方で、距離感が近くなりすぎて疲れてしまうこともあります。

特に歩き遍路の場合、ペースが同じ人と何日も顔を合わせることになり、話が合わない相手や、少し癖のある人と一緒になってしまうと、ストレスを感じることもあるかもしれません。せっかくの修行だから我慢しなきゃと無理をして、自分のペースを乱してしまっては本末転倒です。

心地よい距離感を保つための断り方会話例

トラブルを避ける最大のコツは、最初から心地よい距離感を保つことです。挨拶は笑顔で交わしつつも、無理に同行する必要はありません。もし同行を求められて断りたいときは、相手を尊重しつつ、きっぱりと自分の意思を伝えるのがマナーです。以下のようなフレーズを覚えておくと役立ちます。

多くの遍路経験者は、一人の時間の重要性を理解していますので、丁寧に伝えれば角が立つことはありません。遠慮せずに自分の旅を守りましょう。

逆打ちをするとどうなるのか

八十八番から一番へと逆に巡る逆打ちに関しては、呪いや死者とすれ違うといったオカルトめいた噂がネット上に存在します。しかし、これらは根拠のない都市伝説の類です。

真言宗や四国八十八ヶ所霊場会などの公式情報では、逆打ちを不吉とする説明は見当たりません。むしろ、うるう年の逆打ちは順打ちの三回分の功徳があるといった言い伝えが紹介され、逆打ちツアーが組まれるなど人気の巡礼方法の一つになっています。

逆打ちは順打ち（通常の回り方）に比べて道案内が難しく、道に迷いやすいという物理的な難易度はありますが、霊的な危険はありません。怖い噂は気にせず、安心して巡礼計画を立ててください。

逆打ちについては、以下の記事でさらに詳しく解説しています。もし興味があれば、合わせてご覧ください。

お遍路の逆打ちに呪いはない！噂の真相と安全な巡礼方法

お遍路が気持ち悪いという不安を解消

ここまでは不安の背景を見てきましたが、ここからは視点を変えて、お遍路本来の魅力や、実際に現地へ行く際に役立つ具体的なノウハウをお伝えします。漠然とした不安を具体的な準備に変えることで、安心して旅立つことができるはずです。

宿泊時の注意点と宿の選び方

初めてのお遍路で最も気になるのが宿泊先です。泊まってはいけない宿という噂は、霊的な意味ではなく、設備の古さや衛生面での評判を気にしているケースが大半です。確かに、歴史ある遍路宿の中には、現代的なホテルに慣れた人にとっては不便を感じる場所もあるかもしれません。

しかし、最近では宿の選択肢も増えています。不安な方は、無理に古い遍路宿を選ばず、自分の許容範囲に合った宿を選ぶことが、旅を続けるコツです。ここでは、主な宿のタイプと、それぞれの活用法を紹介します。

宿坊での一日のイメージ

宿坊って厳しそうと不安な方もいるかもしれませんが、基本的には旅館と同じようにくつろげます。一般的なスケジュールは以下の通りです。

• 17:00頃：チェックイン（お寺の門限があるため早めに）
• 18:00頃：夕食（精進料理が多いですが、お酒が出る所もあります）
• 19:00〜：入浴・洗濯（お遍路さんは洗濯が日課です）
• 21:00頃：就寝（翌朝が早いため、早寝が基本）
• 翌6:00頃：朝のお勤め（自由参加の場所が多いですが、貴重な体験なのでぜひ）
• 7:00頃：朝食・出発

宿選びの具体的なチェックポイントや、避けるべき宿の特徴については、こちらの記事も参考にしてみてください。

四国遍路で泊まってはいけない宿の真実と安全な宿選び完全ガイド

巡礼中の体調管理と安全対策

長期間の歩き遍路では、体力的な限界や事故のリスクも心配事の一つです。特に夏場の酷暑や冬の寒さは、想像以上に体力を奪います。長く歩き続けるための一つの目安として、以下のような準備をしておくと安心です。

足元のトラブルを防ぐ3つの鉄則

お遍路で最も多いトラブルは足のマメと膝の痛みです。これらでリタイアしないためにも、事前の対策が大切です。

1. 靴選びは慎重に：新品の靴でいきなり歩くのは厳禁です。履き慣れたウォーキングシューズを用意しましょう。登山靴は重すぎる場合があるので注意が必要です。
2. 五本指ソックス：指同士の摩擦を防ぎ、マメができにくくなります。
3. 早めのケア：少しでも違和感を感じたら、早めに絆創膏やテーピングで保護するなどのケアを検討してください。違和感を我慢し続けると、症状が悪化しやすいとされています。

無理をしない勇気を持つ

水分補給は喉が渇く前に行うのが鉄則です。また、一日の移動距離を短めに設定するなど、自分の体力に合わせた無理のない計画を立てることが重要です。

危険と感じるような悪天候の日は、無理に歩かず停滞する勇気も必要です。公共交通機関を使って一部区間をワープすることも、決して恥ずかしいことではありません。無理をして体を壊すことよりも、健やかに巡礼を続けることこそ大切だと、私はお大師さまのお言葉から感じています。

霊的な不安や迷いとの向き合い方

取り憑かれるのではないか、というスピリチュアルな不安を感じる方もいるかもしれません。お寺という場所柄、どうしてもそういった想像をしてしまいがちです。しかし、お遍路は同行二人と言い、常にお大師さまが寄り添ってくださる旅です。

もし不安を感じたら、金剛杖を握りしめ、「南無大師遍照金剛（なむだいしへんじょうこんごう）」と静かに唱えてみてください。お遍路の体験記などでも、こうしたお勤めをすると心が落ち着いたと語る人が少なくありません。

なお、お遍路中に強い不安やめまい・胸の痛みなどの体調不良を感じた場合は、霊的な理由と決めつけず、いったん歩くのをやめて休憩をとり、必要であれば早めに医療機関を受診することをおすすめします。

お遍路がもたらす良い変化

ネット上では様々な噂がありますが、実際にお遍路を経験した人の体験記などを読むと、霊的な怖さよりも、心が癒やされたり前向きな気持ちになったと語る声が多く見られます。

• 毎日の単純な「歩く」行為による瞑想効果
• 自然の中に身を置くことでのリフレッシュ
• 守られているという安心感による自己肯定感の回復

過度に恐れるよりも、お大師さまと二人三脚で歩いているという温かい感覚を大切にしてください。

トイレや神社の敷居などのマナー

マナーを知らないことで、周囲を不快にさせてしまうのではないかという心配もあるでしょう。基本的なルールさえ押さえておけば大丈夫です。これらは形式的なものではなく、相手や場所への敬意を表すための作法です。

これだけは守りたい！基本作法チェックリスト

詳しい参拝作法については、四国八十八ヶ所霊場会の公式サイト（札所参拝手順）で、山門での一礼から本堂・大師堂での読経、納経所での手続きまで、公式な手順が詳しく解説されていますので、出発前に一度目を通しておくと安心です。

（出典：四国八十八ヶ所霊場会公式ホームページ 札所参拝手順）

どのような人がお遍路を巡るのか

お遍路を巡る人々は、皆それぞれに異なる背景を持っています。白衣を着ていると皆同じように見えますが、その内実は実に多様で、そこには現代人が求める心の豊かさへのヒントが詰まっています。

かつては供養や病気平癒が主な目的でしたが、現代では、人生の節目に自分を見つめ直したい人、仕事のストレスから離れてリセットしたい人、あるいは単純に絶景を楽しむハイキングやスタンプラリー感覚で参加する若者も増えています。

お遍路で見かける多様な参加者

お遍路の体験記やインタビューを見ていると、例えば次のような背景を持つ方がよく登場します。

• 定年退職して、これからの人生を考えるために歩いている人
• 就職活動の前に、自分に自信をつけたくて挑戦する学生
• 日本の文化と自然が好きで、バックパッカースタイルで歩く外国人

重たい事情を抱えた人ばかりで雰囲気が暗い、ということは決してありません。すれ違う人々は、それぞれの人生を背負いながらも、同じ道を歩く仲間として温かく接してくれます。「頑張ってください」ではなく「お気をつけて」と声を掛け合う文化は、日常では味わえない心地よい距離感です。

女性や初心者が安心して巡るコツ

女性の一人歩きや初心者の場合、治安や道迷いが心配になるものです。確かに、人通りの少ない山道や夜間の移動は避けるべきですが、過度な心配は無用です。

安心・安全のための具体的アクション

女性一人でも安全に楽しむためには、以下のポイントを意識してください。

1. 明るい時間帯に行動する：朝は早めに出発し、夕方17時には宿に到着するように計画します。暗くなってからの山道は危険です。
2. 主要なルートを選ぶ：人通りの多い国道沿いのルートなどを選び、マニアックな山道（へんろ道）は、経験者やツアーの時に取っておきましょう。
3. 携帯電話とバッテリー：緊急時の連絡手段として、スマートフォンの充電は常に確保しておきます。地図アプリも活用しましょう。

また、全行程を一度に回る通し打ちにこだわらず、週末を利用して少しずつ回る区切り打ちも一般的です。これなら、体力的な負担も少なく、仕事や家庭との両立もしやすくなります。

お一人での参加を検討されている方は、以下の記事でツアーや一人旅のポイントを詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

お遍路ツアーをひとりで満喫する初心者向け四国巡礼ガイド

お遍路が気持ち悪いという誤解

お遍路が気持ち悪いというイメージは、その多くが誤解や一部の情報の誇張によるものです。実際に四国の地を歩けば、そこには美しい自然と、温かい人々の交流、そして自分自身を大切にする静かな時間があります。

ネット上のネガティブな言葉に惑わされず、ぜひご自身の目と足で、本当の四国遍路を体験してみてください。そこにはきっと、不安を上回る感動と、新しい自分との出会いが待っています。道中お気をつけて、よいお参りを。